マーケティングにおいて、自社の商品やサービスを購入・利用してもらうにしても、まずはリードを獲得することが第1段階です。リード獲得(=見込み顧客の獲得)とは、自社の商品やサービスに関心があり、近い将来購入する可能性がある見込み顧客の個人情報を得るためのマーケティング施策です。獲得したリードに対して中長期的にアプローチを続けることで、成約率を高めたり、広告費用の削減に繋げたりといった効果が期待できます。
マーケティング施策を行っている担当者の中には、「リードの獲得に苦戦している…」という人がいます。みなさんは、見込み顧客を増やすためには潜在顧客へのアプローチがポイントとなることをご存知でしょうか?
潜在顧客と顕在顧客の違い
「そもそも潜在顧客とは?」といったお話になるのですが、リード(見込顧客)は潜在顧客と顕在顧客の2つに分けられます。
潜在顧客とは…
商品やサービスについて知らない未来の顧客のことです。悩みや不安を感じつつも、具体的なニーズや課題を認識できていない段階です。潜在顧客はニーズに対する自覚がないだけで、何かしらのきっかけを与えることでニーズを認識させ、見込み顧客化させることが可能です。
顕在顧客とは…
自身のニーズや課題を自覚していて、それを解決するための手段となる商品やサービスを認知している顧客のことです。そのため、商品やサービスに対する興味関心が高く、ある程度の知識や情報をもっています。ニーズに自社が応えられるということを顕在顧客に認知させることができれば、見込み顧客となる可能性があると言えます。ちなみに、過去に購入・利用している顧客も含まれます。
リードが獲得できない原因は潜在顧客の見つけ方にあり
「リードの獲得に苦戦している…」という話に戻しますと、リードが獲得できていない要因の1つに、潜在顧客へのアプローチの弱さがあります。
潜在顧客は、顕在顧客に比べると成約には遠い位置にいる未来の顧客です。それにも関わらず、なぜリード獲得において潜在顧客へのアプローチが重要なのでしょうか?
それは、潜在顧客は数が多く、競合他社のターゲットにもなっていないため、アプローチ次第で一気に自社の顧客にできる可能性があるからです。顕在顧客はニーズが明確な分、競合他社のターゲットにもなりやすいので、競争率が高く成約するのは容易ではありません。
そのため、リードが獲れず悩んでいる人の多くは、自社商品やサービスにおける潜在顧客の把握ができていない、且つ潜在顧客よりも競争率の高い顕在顧客にアプローチしている可能性があると言えます。
潜在顧客の見つけ方
では、ここから自社商品・サービスにおける潜在顧客の見つけ方を3つご紹介します。リード獲得のための改善策となるかもしれませんので、現在行っている施策を振り返りながら読んでみてください。
- ペルソナを設定する
- STP分析を行う
- カスタマージャーニーマップを作成する
1.ペルソナを設定する
自社商品やサービスを購入・利用している人物像を、具体的なイメージに落とし込みます。「年齢」「性別」「職業」「年収」「居住エリア」「未既婚」などの情報だけでなく、「趣味嗜好」「価値観」「生活スタイル」などに加えて、「生活や人生の中で感じている悩みや不安を、どのような気持ちの変化によって商品やサービスを利用するまでに至るのか」を想定することがポイントです。ペルソナを設定することで、より具体的な人物像を社内で共通認識をもつことができると同時に、ニーズが明確になり、適切なマーケティングが可能になります。
2.STP分析を行う
Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)という英単語の頭文字から名付けられた分析方法のことです。
まずはセグメンテーションで市場全体を把握したうえで、どのような顧客がどの市場にどれほど存在するのかを整理しながら細分化していきます。そして、ターゲティングで狙うべき市場を定め、ポジショニングで競合他社と自社の立ち位置を明確にします。
STP分析はペルソナ設定とは異なった視点で、市場における顧客のニーズが整理できるだけでなく、自社の強みと他社との差別化ポイントの把握、そこからマーケティング戦略を練ることができます。
※参考:https://ferret-plus.com/9701
3.カスタマージャーニーマップを作成する
顧客が自社の商品やサービスを認知し、購入・利用に至るまでの流れを可視化するためのマップのことです。1で設定したペルソナを基に、商品購入・サービス利用に至るまでのタッチポイントを時間軸に沿って整理していきます。
まずは縦軸に、大きく分けて以下5つの項目を設定します。
- フェーズ:実際に顧客が行動をとる段階
- タッチポイント:顧客と接点がもてる場所やツール
- 思考:行動をする際に顧客が考えること
- 感情:行動をした顧客が感じたこと
- 課題:顧客が抱いた不満や不足点に対して行うこと
次に横軸は、以下4つの項目を設定します。
※こちらは商品やサービス、目的によって変わります。
- 認知:顧客がサービスを認知した状態
- 情報収集・比較検討:サービスについて情報収集した・他サービスと比較検討した状態
- 体験・購入:実際にサービスを体験・購入した状態
- 購入後:サービス購入後の状態
カスタマージャーニーマップの縦軸と横軸を設定した後は、設定したペルソナが各項目でどのような行動をするのか、その時の感情、タッチポイント(顧客が行動する時に使用する媒体)を整理して、マップ内に反映させていきます。
最近、友人と旅行に行く計画を立てたので、その時の状況を例にカスタマージャーニーマップを作成してみました。
カスタマージャーニーマップを作成する最大の利点は、顧客目線で商品やサービスを考えられるようになることです。
カスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客の心理に深く寄り添うことで顧客体験(顧客が商品やサービスの購入・利用に至るまでの行動や思考、感情のこと)を向上させ、そのプロセスを最適化できます。顧客と自社商品やサービスの接点がどこにあるのかも整理できるため、接点が生まれる媒体へのアプローチの強化にも繋がります。
潜在顧客のニーズや悩みに共感・寄り添うことが、潜在顧客へアプローチするうえで重要なポイントです。ユーザーの悩みに共感し、解決するための考え方については、Webサイトへの流入やコンバージョンを増やす観点からも以下の記事で触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
リード獲得に有効なオフライン・オンライン施策
次に、リードを獲得するための方法として、オフライン施策とオンライン施策について説明します。オフライン施策は、ターゲット層に直接リーチできるものの費用がかかります。オンライン施策は、費用が抑えられるもののターゲット層に直接リーチできないといった特徴があります。
オフライン施策
展示会への出展
展示会は、複数社が集まって商品を展示し、来場者と直接交流するイベントです。展示会に来場する企業は、「複数社の商品を一度に見たい」、「複数社とまとめてコンタクトを取りたい」、「オンラインでの情報収集が得意ではないため足を運んで参加したい」と考える企業などさまざまです。展示会に出展する企業は、来場者に自社の商品やサービスをアピールし、その場で名刺交換をしたりアンケートを行ったりしてリードを獲得することができます。
テレマーケティング
テレマーケティングは、潜在顧客に電話で自社商品やサービスを紹介する方法です。先方からの電話(会社のお問い合わせページ経由など)へ対応するインバウンド方式と、こちらから先方へ電話する場合のアウトバウンド方式があります。対面での営業と比べて、電話営業は顧客1人へ費やす時間が短いという特徴があります。簡潔に要点を説明しつつ、お客様の反応を伺いながら対応することが重要です。
ダイレクトメールの送付
ダイレクトメールは、ターゲット層に直接自社商品やサービスを紹介する方法です。はがきや資料、パンフレット、試供品などを郵送またはFAXで送付します。受取先が興味を持ったら、送付物に記載した電話番号やメールアドレスに連絡してもらい、リード獲得に繋げます。ダイレクトメールは、費用が比較的安価であるため、小規模な企業でも取り組みやすい施策です。
交通広告
交通広告とは、バス、電車、タクシー、地下鉄、飛行機などの乗り物内や駅構内に掲示される広告です。タクシー広告は、24時間稼働する唯一の交通広告です。ビジネスマンや高齢者など、ある程度利用者を絞り込むことができるという特徴があります。しかし、効果が測定しづらいというデメリットがあります。これは、交通広告を見た人が実際に自社商品やサービスを利用したか把握することが難しいためです。そのため、交通広告を利用する場合は、効果測定を目的とせずに、認知度を高める目的で利用する方が効果的です。
オンライン施策
ブログの作成・運用
ブログは、自社商品やサービスに関する情報を発信する効果的なツールです。ターゲットを明確にしたうえでテーマを決め、定期的に記事をアップしていきます。検索結果画面で上位表示されるようなコンテンツを作ることで、自社商品やサービスの認知度を高め、顧客との信頼関係を築いてリード獲得に繋げます。
リスティング広告の配信
リスティング広告は、ユーザーが検索エンジンで自社商品やサービスに関連するキーワードを検索したときに、自社広告が表示される広告です。リスティング広告の場合、ユーザーは検索したキーワードに興味関心があるため、クリック率が高くリード獲得に効果的と言えます。
SNS広告の配信
SNS広告とは、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSに表示される広告です。SNS広告は、ユーザーのタイムラインやフィードに表示されるため、ユーザーの目に留まりやすいという特徴があります。また、Facebook広告では、ユーザーのプロフィール情報を利用して、自社商品やサービスにマッチしたユーザーに広告を表示させることができます。
メールマガジンの配信
メールマガジンは、自社商品やサービスに関する情報やキャンペーン情報などを定期的に配信できるツールです。定期的な配信が、ユーザーとの継続的なコミュニケーションを図ることに繋がるため、信頼関係の構築やニーズや課題を把握する機会にもなり、より適切なアプローチができるようになります。
リード獲得のためには、オフライン施策とオンライン施策を組み合わせて行うことが効果的です。例えば、ホームページやブログで自社の商品やサービスについての情報発信を行い、興味を持ったユーザーを展示会やセミナーに誘導するといった方法があります。自社の商品やサービスとターゲットを考慮し、効果的な施策を行ってリード獲得を狙いましょう。
潜在顧客が見込み顧客になるまで
改めて、潜在顧客が見込み顧客になるまでの流れを以下3つのポイントでおさらいします。
- 自社の商品やサービスを認知し、興味をもってもらう
- 比較検討してもらう
- 実際に購入・利用してもらう
自社の商品やサービスを認知し、興味をもってもらう
潜在顧客から見込み顧客になるには、商品やサービスを知り、興味をもってもらうことが必須です。どれだけ自信のある商品やサービスを提供していても、ニーズを自覚していない顧客に認知してもらえなければ獲得に繋げることは難しいです。潜在顧客に対して、自社商品やサービスがニーズにマッチしていることをアピールする必要があるため、継続的に情報発信することがポイントとなります。
比較検討してもらう
商品やサービスを購入・利用する際、多くの人は金額や機能、サービス内容などを他と比較して検討する傾向にあります。自社の商品やサービスを認知してもらった後は、自分にとって必要かどうか比較検討する段階に入るため、そこで他と差別化を図ることが重要になってきます。自社の優れている点やどのように役立つのか、購入・利用することで生活や人生がどう良くなるのか。メリットだけでなく、その先のベネフィットまで伝えることが顧客の心を動かします。
自社の商品やサービスを知って興味をもってもらい、他社と比較検討までしてもらうためには、コンテンツを上手く活用して情報提供することが有効です。悩みや不安を潜在顧客の代わりに提起し、その解決策まで明示すること。(「確かにそう言われてみれば…」という気付きを与えることが重要です)そして、その先に自社の商品やサービスがあり、どのように生活や人生に役立つのかを説明します。更に、他社との違いが明確になっている情報がまとまっていれば、潜在顧客がニーズを認知することから比較検討するまで導くことができます。
実際に購入・利用してもらう
ここでようやく、自社商品やサービスを選んでもらうことができれば成約です。しかし、成約がゴールではなく、リピーターとなってもらうことが重要です。継続的に商品やサービスを利用してもらうことで長期的な売上げが見込めます。顧客満足度が高ければ、関連商品の購入やサービス利用にも繋がるかもしれません。クチコミや評価で、顧客同士が商品やサービスを勧めてくれる可能性もありますよね。
成約後も、顧客の要望や変わりゆくニーズに応え続けることが自社への信頼に結びつくはずです。
最後に
改めて、リードが獲得できず悩んでいる人に向けてお伝えしたいことは、まず自社商品やサービスにおける潜在顧客を見つけること、そして有益な情報とアプローチで潜在顧客を見込み顧客にする流れを作ることです。さらに大切なのは、他社ではなく自社を選んでもらうための情報設計やノウハウです。
その具体的な方法とリード獲得後の成約に繋げるための考え方については、【Webからの問い合わせを増やすために】で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事もご一読いただき、リードを獲得できた次のステップとして参考にしてください。
どうしても、自社商品やサービスに結びつけやすい”理想像”にしてしまいがちです。また、勝手な思い込みや想像だけではニーズを見落とすことに繋がりかねないため、お客様の声やアンケート調査などの根拠に基づいて設定しましょう。
日々環境や市況は変わっていきます。10年前と今では、当時20代だった顧客も30代になっているわけで…年齢の変化と共にアプローチ方法も変わりますし、アプローチする対象年齢自体が変わるのも当然のことですよね。そのため、1度ペルソナを作ったら終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。