2023年9月18日更新
執筆者 : 清野 剛|サイト運用支援
目次

最近は、Webの問い合わせにホワイトペーパー(いわゆる「白書」のことで、周知を目的に見込み客に対して企業が提供する資料)を活用するケースが増えています。ホワイトペーパーを作って案内する企業側(サービス提供側)の目的は2つです。

  • いきなり申し込みというコンバージョンにしてもハードルが上がるため、その手前の地点のコンバージョン(「マイクロコンバージョン」と呼びます)を設けることで、ユーザーのハードルを下げ、間口を広げる。
  • ユーザーに対して“知識”というメリットを与えることで、無意識的にエンゲージメントを高め(「リードナーチャリング」と呼びます)、本来のコンバージョンとなる申込率の向上を狙う。

前者に関しての話ですが、マーケティングアプローチ上、いきなりコンバージョンだけをKGIやKPIに設定してしまうと“コンバージョンしたか、していないか”というゼロイチの検証となり、改善の糸口を掴みにくいことがあります。そこでコンバージョンまでのステップを刻み、マイクロコンバージョン化することで段階的なアプローチを可能にします。そのマイクロコンバージョンの一環としてホワイトペーパーの配布を設置するわけです。潜在顧客に対するコミュニケーションという意味では、行動心理学用語のひとつである“Foot in the door”としても広く知られています。文字通り「ドアに足を踏み込む」という意味で、最初からいきなり大きな提案や依頼するのではなく、小さな提案や依頼を重ね、最終的に大きな提案や依頼を受け入れてもらう手法です。

後者に関しては、潜在顧客を顕在顧客にすべく、ホワイトペーパーによって事前知識を与え、サービスへの関心度を高めるという視点です。潜在顧客の懐に入っていく、というアプローチ法としては類似していますが、前者の場合は戦略におけるプロット的要素が強く、後者の場合はコミュニケーションにおける攻略的要素が強いです。いずれにしてもホワイトペーパーはサービス訴求する側にとって重要な機能を持ち合わせているので、丁寧な作りこみを心がけましょう。

実際に、私たちがホワイトペーパーを作成したB2B系企業様において、従来のコンバージョン率が1.2倍になったケースがございます。もともと月間約20,000セッションあった(某マニュアル作成系)企業様で資料請求数が約250件(約1.2%)でしたが、ホワイトペーパー配布というマイクロコンバージョンを設定することで約400件(約2%)のマイクロコンバージョン数とそこからの資料請求数(コンバージョン/マイクロコンバージョン)が約80件(約20%)となり、従来の直接資料請求数である約220件(約1.1%)と合計して約300件の資料請求数となり、結果的に1.2倍となりました。

ホワイトペーパーの効果

このようにホワイトペーパーひとつで結果が飛躍的に伸びることもあるのです。でも、このホワイトペーパーに関して「何を作れば良いの?」というご質問も多いので、基本的な要素を以下に紹介&解説していきたいと思います。
 

ホワイトペーパーの目的は潜在顧客を見込み化し、サービス申込してもらうこと

はじめに、絶対に見失ってはいけないこと。それはホワイトペーパーの目的です。これから作成するホワイトペーパーは数十枚~数百枚に及ぶほどの資料かもしれません。それは大作となるでしょう。それほどのものを作成するのですから、当然制作期間はかかります。そして制作期間を過ごしているうちに作成すること自体がゴールになってしまい、目的を見失うことがあるのです。ですので、以下2つの目的は絶対に見失わないようにしましょう。

  • 潜在顧客にサービス利用を取り巻く環境や業界知識について正しく身につけてもらうほど有益なホワイトペーパーであること。
  • 潜在顧客が自社サービスを利用してもらえるよう、自然に促すホワイトペーパーであること。

ホワイトペーパーを作成する際、内容に困った時や悩んだ時、どちらが良いか選択に迷った時、この2つを常に念頭に置くことで迷いを解決できたり、決断が早まったりしますので非常に重要です。以下に具体的な内容を交えてご紹介します。

業界における一般常識やナレッジを紹介する

冒頭に述べたようにホワイトペーパーはリードナーチャリングの一環として機能しますので、業界における一般常識や知識を紹介することは必要です。ホワイトペーパーはサービスを比較検討する段階ではなく、もっともっと初期段階で欲するものですので、業界内では当たり前だと思われることをしっかりと説明し直すのは有効なナーチャリングになるでしょう。例えば、マーケティング業界におけるホワイトペーパーであれば、以下のように3C分析やSWOT分析等の基礎的なフレームワークを改めて説明するのも無駄ではありません。

ホワイトペーパー例1

ホワイトペーパー例2

ホワイトペーパー例3
 

独自の見解や分かりやすい言葉選びをしながら説明することで、潜在顧客に「この会社の説明する内容は分かりやすい」等と思ってもらえれば、エンゲージメントを高めるのに役立ちますよね。

自社ならではの市場調査&アンケート調査&顧客調査

本当に市場調査が欲しいなら各業界の団体が発行している白書を利用すれば良いわけで、それを企業サイトからダウンロードするほどですので、ユーザーはもっと分かりやすく、端的で、俗な声(生の声)をホワイトペーパーに望んでいる可能性が高いです。そう考えると、現場で事業をしている民間企業ならではの市場分析や顧客データ、アンケート等が非常に有効に働くということが分かるはずです。

  • 実際には、どういう人たち(ニーズ)が世の中に多いか
  • 実際には、どういう人たちが利用する業界・サービスなのか
  • 利用した動機や利用した感想は何か
  • 業界・サービスで気になる点や必要になる意識は何か

こういう情報も潜在顧客の関心が高まることでしょう。例えば注文住宅なら「注文住宅の購入年齢や家族形態、ローン形式、頭金の平均額や月々の返済平均額」「注文住宅と分譲住宅、マンション別に見る購入者層」「購入の転機・タイミング」「注文住宅で重要視する点、最低限クリアすべき点」「注文住宅購入時に注意した点、今後購入を考えている人に対して、どこに注意すべきと進言したいか」等を自社目線でいながらも客観的にデータ分析したり、注文住宅購入者にグループインタビューしたりアンケート結果を集計したりすれば、非常に有益な要素になるはずです。

例えば、マーケティング業界であれば独自調査した以下のような調査資料を紹介することも潜在顧客へのナーチャリングに繋がります。

ホワイトペーパー例4

ホワイトペーパー例5
 

「自社の業界の場合、客観的な判断が難しく、潜在顧客が求めている作り方が分からない」というご担当者様は是非ご相談ください。考察しやすい雛形をご用意しながらご説明します。
 

自社のファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは本来、自社サービスを取り巻く5つの脅威(業界内のド競合、新規参入サービス、代替品となる競合、買い手から交渉される脅威、売り手から交渉される脅威)を分析して、マーケティングを考察するフレームワークを指しますが、ここでは、その結果をいかに潜在顧客に分かりやすく伝えるか、で捉えます。

ファイブフォース分析図

要は“自社サービスを利用することがあなたにとって最もメリットが高いよ”ということをどう表現するかが重要ということです。潜在顧客は常に「こっちから購入した方が良いのではないか、こっちのサービスの方が良いのではないか」と比較検討しながらサービスに向き合っています。

そういう潜在顧客に対して、逆にこちらから先手必勝で「こういうサービスだとこうなります、ああいうサービスだとああなります」と長所短所を明確にし、そしていかに自社サービスが優れているかを客観的に演出しましょう。もちろん虚偽の情報や特定の他社を貶めるような伝え方は良くありませんので、理屈や定量的な要素で表現することが大事です。例えば以下のようなポジショニングマップを通して比較検討と自社優位性を謳うことも有効です。

ホワイトペーパー例6
 

調査・分析結果からどういう風に伝えられるか、切り口や潜在顧客のペルソナに合わせて情報設計するのが(時間的・考察的に)面倒であれば是非ご相談ください。数多くの業界実績から弊社ならではの理論と理屈で支援します。

自社サービス実績例

これは簡単ですね。自社サービスの実績を紹介します。これはただの実績だけでなく、それによる効果まで表現する必要があります。つまり“効果実績例”ですね。ただし、以下の4点に充分注意して作成ください。
 

  • 顧客目線で課題を簡易的な語句として掲載
  • 顧客の具体的な課題と解決を場面を通して定量的に記載
  • 何が良かったのかを明確化
  • サービス詳細は別途問い合わせへ

これをご理解いただいた上で、以下の2つの実績例の書き方はいかがでしょう? どちらがより閲覧者に親切な実績例として機能しそうでしょうか?

<例①>


 
従来の課題:A社では売上と営業力に課題があった。


当サービス○○のXXプランを導入。XXプランは△△機能が優れていて、営業力に課題があったA社にぴったりだった。


結果:A社の売上が2倍になった。
<例②>


 
課題ジャンル:営業効率、業務改善、俗人化回避

従来の課題:A社では売上に課題があり、その理由は営業時間中に別の□□業務に営業工数が割かれ、本来営業すべき時間帯に営業注力できなかった。社員を増強しても営業効率は変わらず、ただPLが足し算されるだけの状態に。


当サービス○○を導入。


結果:営業が□□業務を行わなくなり、本来の営業時間に営業注力できた。残業もせず、むしろ社員を減らしても売上が2倍になり、PLが大幅に改善。

今回のポイント:営業工数の削減と勤続疲労を防ぐために営業1名分の費用で○○を導入することで、営業人員を減らしても売上を2倍にできたこと。

例①ですと、ただ「やりました」だけで良く分かりませんよね。対して、例②のほうの表現にするだけで有益な効果実績例に感じますよね。こういった表現をするためにも充分に顧客情報を理解し、ホワイトペーパー作成時に徹底してヒアリングしておくことが重要です。ちなみにこれは、Webサイトページでも同じことが言えます。Webサイトページにおける実績ページの設計イメージをご紹介しますので、こちらを参考に作成してみてはいかがでしょうか。

実績ページの設計イメージ
 

「ヒアリングした情報量はたくさんあるけど、ライティングのしかたが分からない」という人は是非お問い合わせください。弊社でライティング方針案をご提出したりライティング代行したりできます。とはいえ、まずはご相談のミーティングをしますので、お気軽にご相談ください。
 

問い合わせ方法の示唆

せっかく良質なホワイトペーパーを作成しても、潜在顧客が感動するだけで申込や問い合わせに繋がらなかったらビジネス上の意味がありませんよね。

ホワイトペーパーからスムーズに問い合わせできるよう、問い合わせ手段やその後のステップ等を執拗に明記するようにしましょう。Webサイトのフォーム、メール、電話、SNS、QRコード等、様々な受け皿を用意することで潜在顧客の熱を冷ますことなく問い合わせできるようにします。そして問い合わせた次にどういうステップや手順が待っていて、どこから費用が発生するのか等も分かりやすくホワイトペーパー内で案内していくと非常に良いです。

資料を見やすく作るパワーポイントやCanva等

ホワイトペーパーの受け渡し方法は、(ユーザーはすぐに受け取りたいと思うため)メール送付よりもダウンロードのほうが引き合いが増えます。また、ホワイトペーパーは分かりやすく見やすくなければ意味がありません。よく行政機関や公的機関が文字ギッチギチの資料を作成して公開していますが、読む気がしませんよね(笑)。すっきりとして見やすいデザインを心がけましょう。当然、スマートデバイス(モバイル端末やタブレット端末)でも確認できるよう、文字の大きさにもこだわるべきです。こういったことを色々考えると、ホワイトペーパーはPDF形式が現在最も実用的なのではないでしょうか。

PDF形式のホワイトペーパーの場合、主にパワーポイントやCanvaを使って制作するケースが多いです。パワーポイントもCanvaも余白の使い方は非常に重要ですし、伝えたいことは1ページにつき1つまでにすると分かりやすくなります。贅沢にページを使い、ページ数を多くしたほうが潜在顧客には有益に感じるでしょう。下記はホワイトペーパー全体の設計イメージです。
 

ホワイトペーパー全体例
 

さらに、PDF内の適切な箇所に自社サイトへのリンクを埋め込み、いつでも潜在顧客がサイトに出戻ってこれる仕組みを作ると良いです。ホワイトペーパー専用のLPを用意できれば最高ですね(弊社では全て作業代行を承っています。LPを別サーバから外部配信対応することも可能です)

こういったテクニックに関しては、パワーポイントデザインやプレゼン能力が必要になるので、ご自身で難しければベンダーに依頼したほうが良いでしょう。ちなみに、私たちはパワーポイントによる資料作成に関して、非常に造形が深く、エージェンシーとして何度も何度も作成してきた実績がございます。是非ご相談ください。また、パワーポイントでの作成時における注意点や攻略法に関してもお気軽にお問い合わせください。

ホワイトペーパーの作り方におけるポイントは以上です。ホワイトペーパーひとつとっても非常に手間暇のかかる資料です。ホワイトペーパーはコンバージョンに到達してもらうための“独り歩きするセールスパーソン”とも言えます。独り歩きしても確実に関心度を高められる資料を追求してみてはいかがでしょうか。

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